震災当日に届いた商品が三つあって、
•MacBook Pro
•映画のDVD 2枚
震災のごたごたで観ることができず、今夜、夕食の折に、ようやく時間がとれた。
テレビはめしがまずくなる映像しかやってないので、映画を観るにはちょうどいいのだ。
日本版タイトル「ジョー、満月の島へ行く」
原題「joe versus the volcano」(ジョー VS 火山 といったところ)
1990年作品。若きトム・ハンクス(まだ髪がいっぱいある!)とメグ・ライアン(一人三役!)
のゴールデン・コンビによるロマンチックコメディだ。
トム演じる主人公ジョーは、もう、どうしようもなくlousyな(くっだらない)仕事を
イヤイヤやっているサラリーマン。
人間性を疑いたくなる上司、暗いくらい職場、そして、どことなく「下流」な同僚の女の子(メグ)。
実はこのあたり、まさに当時のジョーの心象風景をそのまま表現している。
メグ・ライアン扮する三人の女性は、ジョーのこころの成長と共に変わっていく。
ジョーは、病気がちだ。
いつもどこか調子が悪い。
上司の課長が、言う。
「みんなどこか調子が悪いんだ! それでも仕事をしている。なのに何だお前は。
いつもどこか調子悪いと言ってる。子どもか」
東京の朝の通勤電車がこんな空気を出している。みんな疲れている。みんなどこか調子悪い。
みんなどこか「癒し」を求めている。
ジョーは医者に行くのが好きだ。
好き、というより、行かざるを得ないほど、精神的に追いつめられている。
医者は、告知する。
「脳に雲がかかっている。不治の病だ。もってあと6ヶ月だろう。しかし安心したまえ。
5ヶ月目に入るまでは痛みもない。ただ、雲が脳に広がって、体も参ってくる。
そして死ぬ。そういう病気なんだ。他は至って健康だ」
ジョー「ということは、こうですか。ぼくは、不治の病である以外は完璧に健康だと」
医者「そういうことだ」
そしてジョーは、会社を辞める。
「ぼくはここで4年6ヶ月働いた。しかし、本当に仕事したのは6ヶ月だけ、後の4年間は全く
時間の無駄だった。4年もだ!」
経緯は省くが、ジョーは南の島へ行くことになり、身支度のため、支給されたアメックス・ゴールド
カードで運転手つきのリムジンに乗る。
運転手が聞く。
「どちらへ参りましょうか」
「買い物に行きたい」
「どちらへ買い物に」
「服を買いたいんだ」
「どのような服でございましょう」
「さあ、わからない」
ここで運転手、車を止める。
「どうして車を止めるんだい」
「私は運転手として雇われましたが、あなたとクイズするために雇われたわけではございません」
「クイズ?」
「服はとても大事なものです(Clothes make the man)。なのにあなたは自分がどんな服を着たいか
おっしゃらない。私に推量させようとされる。これはまさにクイズです」
そして初老の運転手は、後部座席に移り、ジョーに向き合う。
ジョー「今夜は街に繰り出す」
運転手「高級なお店でしょうな」
「そうだよ」
「結構」
「明日LAに飛ぶ」
「ファーストクラスで?」
「そうだよ」
「結構」
「そしてその後、船旅で南の島へ行く」
「ハワイ?」
「誰も知らない小さな島だ」
「なるほど、一般の旅行(tourism)じゃないというわけですな。結構」
ここまで予定を聞き出して、
「ところで、現在お持ちの服はどのようなものを」
ジョー「いま着てるのと同じようなものさ」
「ないのと同じですな」
そして運転手は、ジョーの現在のシチュエーションにぴったり合う店へと
案内してくれる。
とっても気に入っているシーンだ。
Clothes make the man
のセリフが、特に印象的。
ジョーはつい昨日まで、やりたくない仕事を、イヤイヤやってきた。
そんな自分に満足していないし、きっと嫌いなはずだ。
服のテイストなんて聞かれても、答えられないのが自然だろう。
さて、この映画、最初に観たのはサラリーマンの時。
大いに独立への背中を押してくれた。
二回目に観たのは、独立し、ニューヨークへ渡った直後。
現地の宅配ビデオレンタル屋さん(何ていう店名だったか、ここまで出かかっているのに
出てこない。老人力だ)で借りた。字幕なかったので、あいまいに観てた。
そして今日が三回目だ。
一回目、二回目は、後半、ジョーが島へ行くあたりに関心が高かったが、今回は前半部分、
特に、くだんの初老運転手(いい味出しているんだ)とのやりとりとショッピングシーンが
楽しかった。
大震災や原発爆発で、ついつい下を向いてしまいがちな昨今だけど、そんな時こそ、
希望を持てる、素敵な逸品です。おすすめ!