一日、九份(きゅうふん、ジォウフェン)に足をのばした。

今回の旅は、台湾を始め中華圏に造詣の深い酒井君がリーダーとなり、

同じく月に一回はヨーロッパへ出張している川口君も「旅の達人」

として意見を言う、という図式があって、ぼくはただぶらーんと

ついていくスタイルだ。

だから、事前に全く準備もなにもしていない。

九份という土地も、全く知らないが、行く。

前夜、ホテルフロントの親切な三人娘に、

地下鉄&バスの乗り継ぎ方法やマップ、案内などの資料をコピーしてもらっていたので、

それに従い、出発。

バスで2時間ということだったが、実際は1時間半くらいで着いた。

狭い道の両端にお店があって、何かに似ているなあ、と思っていたのだが、

日本の、参道のただずまいに似ているのだ。そう思ってみると、景色の

開けた場所に仏様を彫った岩のスピリチュアルな場所があって、線香が炊かれ

ていた。

ここはかつては金が採れた鉱山でにぎわったそうだ。

ただ、そもそもの出発は、参道じゃないのかなあ、と思う。違うかもしれないけど、

仮説は立ててみるのだ。

酒井君の「本格的茶房でお茶したい!」希望に従い、入った店は阿妹酒館。

店内から眺める景色がよく、お茶をサーブしてくれるおねえさんの話も

面白く、楽しめた。

窓からは、映画「非情城市(A City of Sadness)」のタイトルを掲げた旗が見えた。

下の店が掲げているのだ。

途中、日本人と結婚して27年東京(江東区)に住んでいたタカハシさんという女性が

話しかけてきて、お茶を淹れてくれた。タカハシさんのご主人は年金生活で東京に残り、

彼女自身は生まれたこの地に戻って、親と同居しているという。

「離れているから、新鮮なのよ」と笑う。流暢な日本語だ。当然だけど。

「それにしても男三人で旅って、珍しいわね。三婆というのなら、ほら、よくあるけど」

茶器をどうか、と勧められたが、丁重にお断りした。

この店、後で知ったのだが、『千と千尋の神隠し』の湯婆婆の屋敷の

モデルになったそうだ。

このお面(右側)。見覚えあるでしょ? ほら、お風呂に入って大満足する神様の顔。