JOYWOW横浜オフィスのトイレはTOTO製ネオレスト(→)。
たいていのトイレはタンクを背負っているが、ネオレストは
タンクレスだ。すっきりとスタイリッシュで、かっこいい。
掃除も楽である。
ネオレストを開発するにあたって、壁は山ほどあった。
第一に、製品開発の壁。
家庭の水圧は家庭ごとにバラバラだ。一戸建てなのか、集合住宅
なのか。
また、同じ家庭でも、お風呂を使っているときや
キッチンで洗い物をしているときなど、微妙に違う。
どんな時でも8リットルの水がきちんと出るようにするにはコンピュータを
搭載せざるを得ない。コンピュータ搭載にした。
第二に、施工の壁。
コンピュータを搭載すると、これまでの施工業者では故障した時手に負えない。
彼らは口々に「できないもっともな理由」を並べた。
ぼくはいつも、「もっともな理由」を疑うことにしているが、この事例からも
イノベーションには「もっともな理由」が壁になることがわかる。
「もっともな理由」とは、「過去の前例」が根拠であり、全く新しい価値を
生み出すイノベーションには効かない。
これに対しては、各地での勉強会や営業マンのキメ細かいフォロー
を通じ「次世代のトイレはこういうものです」と宣言して、受け入れてもらう
正攻法を取った。
第三に、行政の壁。
水道管とトイレを直結したため、水道局としては「口に入る大事な上水が
汚水の逆流で汚染されでもしたら大変」と考えた。それはそうだ。
そこで、TOTOの開発プロジェクトメンバーは、全国の都道府県の
水道管理局と市役所を一軒ずつめぐって、汚水と上水が絶対に合流しない
構造であることを説明して回った。半年かけて。
話しているうちに、同じ日本人同士なのに、言葉が通じないことがあった
という。TOTOは九州の会社である。最初はお互い標準語で話していても、
熱を帯びてくるとそれぞれの方言になる。すると、お互いの言っていることが
わからなくなったのだそうだ。
ぼくはこのエピソードを聞いて、すごい仕事だ! と感動した。
お互い方言で議論しあうほどの熱さが現場に生まれたら、それだけでその仕事は
価値あるものだと思う。
壊せない壁なんて、ない。
相手の言葉がわからなくなるまで、腹を割ってないだけなのだ。
*参考『世界一のトイレ ウォシュレット開発物語』林良祐、朝日新書