現実の中で生かしてこそ、理論は役立ちます。
今日は、「原発事故」という大問題が、なぜ、簡単に前進しないのか、
「人材配置」「仕事の設計」の観点から考えてみます。
ドラッカーは、『The Effective Executive』(経営者の条件)
第4章『Making Strength Productive』の中で、成果を上げない
仕事がうまれる理由について、こう述べています(p.76)。
The main reason is that the immediate task of the
executive is not to place a man; it is to fill a job.
「成果を上げる強みをもった人」を配置するのではなく、
「そこにやらねばならない仕事があるから、人を配置する」から。
席があるから、座らせる。
その席で求められる成果を上げるとわかった人を座らせるのではなく。
しかるに、往々にしてなされる「対処」は、次のようなものだと
ドラッカーは首をふりつつ、指摘します(p.76)。
The widely advertised “cure” for this is to structure jobs to
fit the personalities available.
そこにいる人に合うように職務を構築し直す。
原発事故は未体験の事故です。しかし、そこに仕事がある。
だれかが担当しなければならない。責任者となるとやはり事業主の
東電である。だから、東電の中から、だれかが配置される。
しかしながら、これは、「席があるから、座らせる」論理であり、
「成果を上げる人を座らせる」のではありません。当然、成果は
望めません。「しなければならない成果」ではなく「できる範囲の
成果」しか、上げられないのですから。
そうではなく、「成果を上げる人=原発事故に対する知識が豊富で、
同じ体験はないにしても、推測可能なだけの知見をもった
プロフェッショナル」を座らせる
発想で考えなければならないのです。
この論理でいくと、「東日本大震災の復興」という成果についても、
できる人がリーダーになるべきであって、
たまたまその災害が発生した時の首相がリーダーになる必要はないのです。
復興リーダーと、首相職とを、分けて考える。
「強みを生かす」本質は、ここにあります。
*JOYWOWメルマガ2011年4月6日発行・第135号より転載