B2B営業マンの仕事はたった一つ、顧客を儲けさせること。
つまり、自社商品(製品・サービス)を使った顧客が売り上げを上げたり、生産性を高める
ことによって、儲ける。
商品はそのための手段にすぎない。だから、商品を売ることが営業マンの仕事ではない。
B2B営業のジレンマは、自社商品の売れ行きを自社でコントロールできないことにある。
というのも、たとえば、自社の売っているカーナビが自動車メーカーX社の新車Gに標準搭載
されたとする。懸命の営業の結果だ。
営業部隊は祝杯をあげる。よくやったと互いの健闘をたたえ合う。
ところが、関係者全員の期待を一身に背負ったはずの新車Gが大方の予想に反して全く
売れない。X社は早々にGの製造販売の打ち切りを決定した。
そうなると、あれほど時間と経費と労力をかけてスペック・インに成功したカーナビ
の売り上げはGの分まるまるなくなる。なくなるが、そのコントロールは自社ではできない。
「あなた任せ」なのだ。
そう、この、B2B営業における「あなた任せ」のボトルネックは、昔から切歯扼腕の思いで、
感じていた。ぼくも19年間、旭化成の建材営業をしてきたから、わかるのだ。
それで思い出したが、直接の担当ではないが、机を並べていた建材部門の他の製品ブランドが、
ある時を境に、ぐんぐん出荷量をのばした。その秘訣をきいたところ、
「山口が本社のな、ファーストリテイリングいう会社がユニクロって店舗をどんどん作って
るねん。うちの壁使ったら工期短くなるやろ、だから急速な多店舗展開のユニクロのニーズに
マッチしたみたいやねん」
と答が返ってきた。
ぼくは1984年、大阪から転勤した年、広島にユニクロ一号店がオープンしたのを覚えている。
店舗へも実際に行った。暗い倉庫のようなイメージで、好きにはなれなかった記憶がある。
そうか、あのユニクロがそんなに多店舗展開を・・・こう思ったのはいつだったか。
1996年とか、そういう頃かなあ。
つまり、ユニクロの店舗展開に旭化成の建材が役立ったわけである。だからリピートが
あった。
B2B営業はややもすると「部品屋」になってしまう。
しかし、上記のカーナビの事例のように部品の一部となった最終製品が売れる・売れない、
はコントロールの範囲外であって、努力のしようがない。これではビジネスにならない。
そこで解決策として、ビジネスの価値連鎖(バリューチェーン)の川下から川上へと逆流し、
顧客が形にして実現したいニーズの開発にまで関わるようにする。
このあたりについては拙著『共感企業』p.164-166に詳しいが、
同様のことをインテグレート・マーケティングとして実践した人がおられる。
『99.9%成功するしかけ』を書いた藤田康人さんだ。彼はもともと味の素で機能性食品添加物
アスパルテームを担当していた。
そこでの体験をもとに、日本になじみがなかったキシリトールを育て、ゼロから2000億円
もの市場を創出した。その手法が、上述の、「顧客を儲けさせる」第三世代ビジネルモデル
で、川上から川下まで一気通貫でしかけていく統合的マーケティングアプローチだ。
この本、本当に面白いよ。おすすめです!