旭化成就活時、面談した人事部所属、同じ阪大人間科学部の
Y先輩に「まさか、ぼくら人間科学部が履修していない学科の昇進試験とか、
ないですよね?」と確認した。
「ないない、そんなもん、ないよー。だから安心して入っておいで」
大ウソであって、入社二年めに経済原論、マーケティングの試験があった。
夏に受験した経済がさんざんな成績で落第、「後が無い」思いで必死に
なって勉強開始したのがその冬に試験が予定されていたマーケティングだ
(ちなみに経済は翌年満点で合格)。
マーケティングとの出会いが、これ。
テキストが写真右の本で、『新版 マーケティング通論』(同文館)。
初版1967(昭和42)年、新版改訂でも1975(昭和50)年だから、内容は今読むと相当古い。
しかし、1982(昭和57)年当時はこれがマーケティングだったのだ。
いやー。面白かったなあ。
ヘーベルという建材の営業をしていたのだけど、旭化成はトップブランドだった。
トップブランドだからこそ取り組まねばならない価格戦略や流通戦略が
言葉として、理論化されている。ジャングルを迷っていたところへ地図を
手にしたような感じで、目の前の霧が一気に開けた思いがした。
同期の中野君は慶應マーケティングの出身だから、「試験に出るマーケティング例題69選」
というプリントを手作りしてくれて、これをテキストに、一所懸命勉強した(Thanks a lot! Mr. Nakano)。
出張先にも持って行き、ビジネスホテルの狭い部屋で勉強した覚えがある。
本当によく勉強した。書き込みがみっしりある。
おかげで、試験はトップで合格した。
でもね。
まさか後年、マーケティングを仕事にするとは、この時、夢にも思っていない。
今年、マーケティングの本を出す。
この本に書いてあることとはまったく違う内容、むしろ否定する内容を書いている。
これもまた、夢にも見ていないことで、人生、だから面白いね。
いやあ、人生には負荷が必要ですね。とてもいい話で感動しました。