ウィンドウズ機は1995年からずっとIBM Think Padを愛用していた。
2005年、IBMがパソコン事業をレノボに売却ときいたときはとても残念な気がした。
2014年、パソコンで儲かっている会社はなくなった。
現在、IBMは企業向けソリューションビジネスで大いに繁盛している。
その先見性には舌を巻く。
マッキンゼー出身CEOルイス・ガースナーの著書を繰り返し読み込むうちに、
パソコン事業をやめて、ソリューションサービスへと舵を切るのは
極めて合理的な戦略シナリオのもとに選択された道なのだとわかった。
なんと、1994年、まだインターネットが世の中に普及する前に、
IBMは「コンピューター業界が数千のニッチ企業に分解すれば、
情報処理サービスが急成長セグメントになる」と考えた。
つまり、クライアント=デスクにあるパソコン=ユーザー
が増えればふえるほど、その「底」に必要とされる
情報インフラのアーキテクチャーが必須になる。
個々のパソコンでは手に負えない負荷を情報が
持つようになる。質と量共に。
個人ならまだしも、これが企業、しかもグローバル企業となると
事業戦略そのもののソリューションになる。
たとえば、アジアに進出しようと考えたとき、
企業が第一に取り組まねばならないのはITの
アーキテクチャーだ。横浜の本社とハノイ支社を
ネットワークでつなげなければならない。
そうなると、
個人が使うようなクラウドで間に合うはずがなく、
企業に合った独自デザインのインフラストラクチャーを
構築しなければならない。
しかもそのインフラを流れる情報の質と量は
「やってみなければわからないが、やる前に意思決定しなければならない」
性質を持っている。その意思決定をするのは小さな部門の担当者ではない。
最高技術責任者(CTO)や上級経営幹部だ。
IBMが創業時からよく知り、理解し、得意とする顧客なのである。
イエス、IBMは「取り扱いが得意な顧客」に自社のビジネスモデルを
合わせて、成功したのだ。
つまり、IBMは「パソコンが儲からなくなるのを見越して売却した
のではなく、IBMの強みや資産を活かせる方向を見据えた結果、
この道しかない、と選択した」のである。
「eビジネス」という言葉を生みだしたのもIBMで、やはり
賢い人って、世の中にいるんだなあ、としみじみ。