資料を求めて書店へ行き、フラフラしていたら、『ストーンズ全曲制覇』
なんていう、まー、何の役にも立ちそうにない本に出会ってしまった。
著者は中山康樹さんで、マイルス・ディビス自伝翻訳やビートルズの評論
で昔から馴染みで、大好きな人である。彼の関西人ならではのバランス
感覚をぼくは信頼している。
『ストーンズ全曲制覇』はストーンズの楽曲全509曲をアルファベット順に並べ、
収録アルバムごとに違う曲の顔をすべて語っていこうという企画。
ストーンズ結成50周年で盛り上がっていた2012年の出版で、半世紀活動
してきたお化けバンドをシビアに分析していく。
フムフムと立ち読みしながら、なんだか今日ぼくが買うべきなのは
この本だと思い始めた。
いや、違う、ちがう、ぼくが求めている資料は
中国古典に関するもので、まったく違う・・・と思いながら、結局
買ってしまった。
そして昨夜は午前0時を回っても読み浸り、今朝早く
からまた読み続けている。
もちろん、ストーンズをかけながら。
なぜ、こんなにこの本が気になるのか。
ぼくは今年出版デビューして16年だ。
1999年に生まれた赤ん坊はティーンエイジャーに育っているし、
当時30歳だった人は当たり前だが46歳になっている。
6月に出る『ブランド・ジーン』本は通算35作品目にあたる。
この16年の間、翻訳、文庫、電子メディアを含めて、34作品を出している。
その間、ぼくを動かしてきたのは「いつもsomething new」という
こと。
16年前からずっとぼくの作品を読み続けてくれているありがたい読者がいる。
彼らはとてもありがたいが、一方、非常に怖い存在でもある。
「以前にも聞いた事例が多いので☆一つ減らしました」
とアマゾンの書評に書いたりする。
近い人なら、
「一時、阪本さんの本は繰り返しだと思った時期もありましたが、
今度の本は違いますね」
なんて直接言ってくれる人もいる。
怖いよー。これ。
ストーンズも、半世紀やっていたら、そりゃ、いろいろ言われる。
そして現在『ブランド・ジーン』制作の山場だ。
ただでさえ「扱いに困る」コンセプトの上、
編集者から容赦ないツッコミが来て、それにボールを返す。
その「返し方」が、新境地を拓くものになっているのか、
あるいは、昨日と同じことを守らんがためのものなのか。
そこをしっかり知っていないと、あかん。
一方、「いつもの阪本印」という基盤も、必要だ。
ストーンズでいうなら、チャーリー・ワッツがとにかく
冷静に重厚なビートを製造し送り続ける。
キースが空間に蹴りを入れ、絵に描いたような手抜きの
グダグダなリフを刻み、ロニー・ウッドが何がいいのか
わからない意味不明のリズムを刻み、ミック・ジャガーが
「そこまでやるか」というナルシシズムな演技を始める・・・
という。
ま、考え過ぎも、あかんのですけどね。