創造とは、「突き抜ける」ことだ。

たとえば「大阪のおばちゃん」を描写するのに、

ヒョウ柄の服とか「シュッとしてと言う」とか

そーゆーのは類型であり、「確実にある程度は受ける」

安全地帯であって、創造とはいえない。

現実は、こうだ。

映画館。

前の列の席 ABCDE

のABに大阪のおばちゃん二人が

お連れで座った。

しばらくしてCに若い男性が座った。

おばちゃんAとBはしゃべってる。

と、若い女性がやってきてDの席に座り、Cの男性と話し始めた。

断っておくがそれまで男性とおばちゃんは全く言葉を交わしていない。

おばB「いやー、にいちゃん、彼女おったんや。かわいらしいこぉやこと!

イケメンと美女カップルやん。よかったやん!」

Cの男性、返答に困る。

しばらくして、Eの席に若い女性がやってきた。

D席の女性は黙ってE席に載せていた自分のバッグを取り上げ、膝に置いた。

ぼくは一瞬、EはDとお連れかと思ったが他人のようである。

Dは勝手にE席の上に自分のバッグを置いていたのである。

つまりDもまた年齢は若しといえど、「大阪のおばちゃん」の遺伝子を

確実に宿しているのである。

これが大阪のおばちゃんである。

なんばグランド花月。開演した。若手漫才師が舞台で一所懸命演じている。

と、大音量でケータイが鳴り始めた。

おばちゃん「あんた! はよ止めなはれ!」

おっちゃん「え!? わしか? あ。わしや」

おばちゃん「せやからおとうさんやないの。はよ止めぇや!」

この二人、夫婦ではない。

たまたま隣り合わせに座った他人である。

ちなみにこの緊張感あふれる一件に、舞台の若手漫才師はすべて食われ、

観客の注目を取られてしまった。まあ、これも芸の修業であろう。

おっちゃん「わし、止めかた、知らんもん」

で、ケータイが鳴り終わるまで続いたのであった。

ピクサー20周年記念作品『インサイド・ヘッド』(→クリック!)

大竹しのぶと竹内結子。さすがにこの二人の声だからこそ成立した

面白さと言える。甲乙つけがたい名演だ。

シナリオもいい。

面白い。

でも、それだけなのである。

ピクサーは20年経って、これなのかと思う。

つまり、「大阪のおばちゃんの類型」なのである。

映画館で隣り合ったカップルに話しかけたり、

なんばグランド花月でおっさんを叱りとばす

突き抜け

がないのである。

期待しすぎかもしれない。

ピクサー、好きだからなあ。

ウディ・アレン映画で使われた音楽ばかりを集めた3枚組アルバム。突き抜けてます。

ウディ・アレン映画で使われた音楽ばかりを集めた3枚組アルバム。突き抜けてます。