8/12に観て良かったと思った。
映画は玉音放送の行われる8/15までのカウントダウンを
乾いたタッチで、描く。
その乾き具合が、余計に感情をゆさぶる。
原田眞人監督、巧みだ。
70年前の同じ日と2015年8月**日とをつなぐタイムマシンが
劇場スクリーンなのである。
スクリーンに生きる人物は、爆弾は、焼けたにおいは、
決して虚構ではない。リアルなのだ。
公開時期、しっかり考え抜かれている。
無私であり、利己心から行動する人物はいない。
みんな、信念のもと、行動している。
その姿が、美しい。
単なる戦争映画ではない。
人が美しく生きる姿を描いたものだ。
『クラウド・アトラス』原作小説のラストを思い出した。
(引用ここから)
何が結果を生むのか? 邪悪な行為と善良な行為である。
何が行為を生むのか? 信念である。
(中略)
なぜ? なぜならばこうだからだ —– ある晴れた日に、
純粋に他者を食い物にする世界が、自分自身を食い尽くす
ことになるからだ。そうだ、悪魔は最後部を捕まえるが、
それも最前部が最後部となるまでだ。個人においては、
利己主義が魂を醜くする。人類においては、利己主義は
絶滅を意味する。
混沌は我々の性質の中に書き込まれているのだろうか?
もし人類が必死に戦う段階を超越すると信じるならば、
もしさまざまな人種と信条が孤児たちがククイノキを
共有できるように、世界を平和に共有できると信じるならば、
もし指導者たちが公平であり、暴力に歯止めをかけ、
権力には責任を必要とし、陸と海の富は公平に分ける
ことができると信じるならば、そのような世界は来るのだ。
私は騙されてはおらぬ。これは実現するのにもっとも困難な
世界である。何世代にもわたって勝ち得た苦難に満ちた進歩が、
浅慮な大統領のペンの一書きで、虚栄心の強い将軍の剣一振りで
失われてしまうだろう。
ジャクソンが受け継ぐことを恐れる世界ではなく、彼に受け継いで
ほしい世界を作るために生きる人生、これが生きるに値する人生だ
と考える。
(中略)
義父の言葉「息を引きとる間際になって、わかるだろう、お前の人生は限りない
海のたったの一滴でしかないのだということを!」
だが、どんな海も数知れない一滴からなるのではないのか?
(引用終わり)
*『クラウド・アトラス』中川千帆翻訳下巻p.352-354より引用
大海の一滴かもしれないが、それでもこの人生は生きるに値する。
生きようと、強く思った。
「日本のいちばん長い日」を生きて創造してくれた先人たちに
続いて。