ホノルル、アラモアナ・ショッピング・センター隣の
ボーダーズ書店で風変わりなタイトルの本を見つけた。
『Selling the Invisible』
見えないものを売る。
1998年8月7日のことだ。
帰国する機内で読み始め、ハマった。
ピカソの有名な逸話も載っている。
パリのカフェでくつろいでいたピカソに、あるご婦人が
「私を描いてくださいませんこと?」
ピカソはサラサラっと描いた。
正真正銘オリジナルのピカソの出来上がりだ。
「まあ素敵。お礼はいかほど差し上げればよろしいかしら?」
「5000フランいただきましょうか」
「あら。たった3分しかかけてらっしゃらないじゃありませんか」
「なにをおっしゃる」
ピカソは言った。
「わたしは生涯かけてきたのですぞ」
(p.137-138)
この本で著者ハリー・ベックウィスはベストセラー作家になった。
人生が変わったという。
『インビジブル・マーケティング』は続編ともいえるもので、
「はじめに」で、ハリーはその激変について書いている。
(ここから)
これまで聞いたこともない街から手紙が届くようになった。
かかってくる電話に訛りが目立つようになった。
ありがたいことに、いずれもお褒めの言葉であふれていた。
本心から言ってくださっているようだった。
(ここまで)
ハリー自身、第1作目の『Selling』から『The Invisible Touch』(インビジブル・マーケティング)、
そして第3作目『What Clients Love』(買いたい心に火をつけろ!)へと作品が変遷していく
中で、人生の変遷を体験している。
当時はそこに目を向ける余裕がなかったが、いまあらためて俯瞰してみると、
かなり興味深い。
ともあれ、マーケティングにおけるハリーの貢献は、「見えないもの」つまり
「サービス」に光を当て、そのマーケティングを考察しつづけたことにある。
最後、出張先のサンフランシスコのホテルの浴槽で翻訳のための
読解を終えたことがいまでも印象的だ。
2001年4月12日上梓。