「わたしな・・・家出してきてん」
「えっ!? ・・・ってまたかいな」
「そんな言い方、せんといて」
「なんでまた」
「きまってるやん、サトシ(仮名)やん。このまえな、わたしな、サトシのな、
ほら、小さいバッグあるやん」
「しらんって、なんでわたしがあんたのダンナのかばん知ってなあかんの」
「バッグの中見た」
「はあ」
「ほんならな、バイアグラあるねんでちょっと!!」
「シーーーッ、あんた、声大きい」
「ごめん、ごめん、バイアグラがな」
「わかったがな」
「あってん」
「それで?」
「なんで要るん? なあ、なんで要るん? また女、できたんや。もう腹立って」
「それで出てきたん?」
「そう。晩ご飯の用意はしといたけどな」
「よういわんわ。ほんでいつまで家出するん?」
「それがな。台所のわかりやすいとこにな、日記、おいてきてん」
「はあ」
「実はそれ、私の空想日記やねんけどな。こういうこともあるかと、ずっとつけててん」
「どんなんやの、それ」
「シュンスケさん、いう人が出てくる」
「だれ、それ?」
「架空の、わたしの、相談相手」
「で?」
「『シュンスケさんが、もういいからこっちへ来なさい、いいはる。
いま、わたしが行ってしまったら、もう元へは戻れない気がする・・・』
とかな、書くねん」
「なるほど。それをサトシちゃんに読ませてヤキモチ焼かそう、という腹やね」
「せや。あんたにも出てもらってるで」
「えっ!?」
「ミサトに相談したら、『あんたを幸せにしてくれるのはシュンスケさんしかいない』
とアドバイス」
「ちょっと待ってえな。何でわたしが。それやったら、わたし、サトシちゃんに悪者やん」
「まあ、ええやん」
「ええことないっ!」
「ところがな」
「ナニ?」
「問題がな、あるねん。それが家、出てから気ぃついてん」
「せやからナニ?」
「サトシちゃんな、字、読まへんねん」
「そんなことないんちゃう? 大事な奥さんの日記やったら」
「そういうレベル、ちゃうねん。あの人、週刊ポストでもグラビアしか、見ぃひん人やねん」
「よーいわんわ!」
「なあ、サトシちゃん、読むやろか? どう思う?」
「知らんわ!」
*以上、これまた大阪、今度はミナミの喫茶店となりの会話。
聞き耳を立てたわけじゃなく、地声、でかいんですわ!
静かに読書したかったんやけどね、ぼくは(ウソ!)。