DXの本質は創発(emergence)である。
創発は聞き慣れない言葉かもしれないが、
個々の単なる総和を超えた新しい何かが生まれること。
梶原奈美子さんが取材に丁寧に答えてくださった。
ちなみに梶原さんはキリンの前はユニリーバでダヴのヘアケア商品の、
キリンの後はスタンフォード大学へ留学、
いろんなプロジェクトを手掛けておられる。
ブルーボトルコーヒーの日本市場進出も関わっておられるようだ。
キリンフリー開発メンバーは4人。
ブランドチーム2人、技術チーム2人合計4人。
たった4人!
アルコールゼロのビールとは、言い換えれば
「ビールテイストのソフトドリンク」だ。
ビールの味を決めるのは炭酸ではない。
決めるのは数百種類の香り成分であり、
さすがビールの王者キリン、ここをしっかり押さえていた。
つまり、風味が重要なポイントだと。
そして、その前に大ヒット作『氷結』を作っていた。
それまでの缶チューハイでは「焼酎が主役」だった。
「氷結」のポイントは搾りたての果汁を濾過して
固形物や雑味を取り除いた後、
濃縮させずにそのまま氷結させ、
その「氷結ストレート果汁」を主人公にしたことだ。
つまり、氷結チームの知の強みは香味調合技術があった。
開発途上のフリーは酸味が強かったので、
グループ会社のキリンビバレッジに取材し、
「酸味を和らげる技術」を学んだ。
つまり、キリンビールという大きな組織の
どこにどんな「知」があるのかをバードアイ(鳥瞰)し、
化合させ、創発した結果がキリンフリーなのだ。
組織は基本、タテである。
組織の壁を破って個と個をダイレクトに結びつけ、
「知」の在り処(ありか)を浮き彫りにし、
「異種」を化合して、創造する。
これがDXの本質であり、
通信環境やパソコンスペックの問題ではないのである。