商売人のカンどころ、というのがある。
今朝、出勤前、葉山のスターバックスに立ち寄った。
オーダーして、待っていると、小さな子ども連れのおかあさんが、
食べきれずに持って帰るドーナツを包んでほしい、というお願いを
スタッフにした。スタッフが紙ナプキンを出して、ドーナツを包んであげ
ているちょうどそのとき、彼らの脇のドアが開いて宅配便のおにいさんが
入ってきた。
「おはようございます!」とおにいさん。
スタッフは「おはようございます!」とあいさつを返礼しただけで、目線と
意識はそのままお客さんのおかあさんと子どもに。
その間、宅配便のおにいさんへは一言も言わず。存在すら無視。
母子がテラス側のドアから出て行くことをきちんと見届けてから
はじめて、宅配便ドライバーのほうを向き、サインをし荷物を受け取った。
この、顧客への集中力。これは、マニュアルや教育で身につくもの
ではない。
本人が商売人かどうか、だ。
これは「スターバックス」という店舗とコーポレートブランドの向上に
つながる行動だけど、逆は必ずしも真ではない(スターバックスの接客
は、他の現場で、「マニュアル通りにやっているだけ」という必ずしも魂の
こもっているとはいえない品質の行動を見ている)。
とすれば、本人の「センス」によるのだ。
「和魂商才」というのは、こういう行動をいうのだろう。
厳密にいえば、彼女(店舗スタッフ)は何も行動していない。
気を集中させただけである。
ビジネス書やマニュアルのどこにも「気を集中させよ」とは書いていないはずだ。
「気を集中させることで売上が20%アップする」なんていう「法則」も
きっとない。
そうそう、これを忘れてはいけない。
宅配便ドライバーも、「わかった商売人」で、彼女が気を集中させている
間いやな顔ひとつせず、待っていた。
このあたりの勘どころが、彼もまた、商いのセンスを持っている人なんだな、
と思って、嬉しかった。
現場で顧客満足を形成するのは、こういうセンスなのである。