さて、今日から、ニューヨーク紀行を始めます。

時系列で日記を書いてもおもろないので、「人」「事件」「本」

という風に、テーマごとに書いていくつもり。

でも飽きっぽいから、飽きたら、やめちゃうかもしれません。

そのときは、ゴメン。

まず登場願うのは、ホテルの並び(7th Ave.)にあった土産物店。

旅が始まって、最初の頃、たしかあれは啓三が到着するというので

彼のホテルペンシルバニアに迎えに行く時じゃなかったかな。

ニューヨークはぼくが着いた翌日、火曜日から雨で、その日は水曜、

朝から降ってた。しかも寒い。

日本からダウンジャケット持って来て正解だった。

多少の雨なら、ダウンのフードを頭からかぶればオッケーだったの

だが、その日は風も強く、傘無しで出かけるにはメゲそうな感じだった。

ダメモトでホテルフロントのおっさんに「傘貸して」と言ってみたが

そしてニューヨークでは当然のことだが「ない。売店で買え」とのお達し。

売店に行くと愛想100%無添加のねーちゃんがブッサイクな折りたたみ傘を出して

「他のデザインは?」と聞いても「ノー」の一言で、もともと

折りたたみ傘は嫌いなので、買わんかった。

どないしょ、と思いながら、時間なので、ええい面倒だ、とにかく出ちゃえ、

とホテルから出たら目の前に土産物店がある。

店先に、長くて丈夫そうな傘が並んでる。

よっしゃ、ここで買えばいい。

一本抜き取って、「?」という感覚があったのだが、それはその時

なぜかわからんかった。

100%うさんくさい笑顔のアラブ兄ちゃんが寄って来て、

「それでええか?」

と聞く。「ええか」ではなく、実は万引き防止で、お金を早く支払え

という意図だ。

あらためて見回すと、レジを始め、店内至る所に同じ顔をした男たちが

群れている。みんなアラブ系である。しかも似ている。ひげある。

ぼくはこの店を「アラブ兄弟社」と名づけた。

10ドルちょっと、すぐ支払い、支払った後、傘をさそうとして気づいた。

これがさっきの「?」の理由だったがお金を払った後であとの祭り。

傘の持ち手のすぐのところに大きく「New York」と掘ってあるんである。

うひゃー、かっこわる。

でも仕方ない、さして出かけようぞ。

店先で早速さしたら、手元の金具(おりたたんだとき、傘の先っぽを納める金具)

が早くも所定の位置から外れ、柄を行ったり来たりすることが判明した。

さすがアラブ兄弟、ええ加減な品物、置いとるなあ。

ま、いいや。

啓三のホテルは34にあって、それはペンステーションだから、赤の地下鉄に

乗らなあかん。赤はこっちや。あわてて歩く。雨。風。

交差点にさしかかった。

ニューヨークの人は、まず、信号を守らない。

ぼくも守らない。

交差点を小走りで駆け抜けようとしたその時、

一陣の風が。

と。

ぶわっ!

と、傘がまるで昭和のマンガのように、裏返って逆立ちした。

交差点の向こう岸に着き、傘を元に戻そうとするが、無意味に大きい

こともあって、全く動かない。下手すると傘の先っぽ(露先というんだそうだ)

が目に刺さりそうで、コワい。

雨。風。

いやになって、目の前の巨大ゴミ箱

(ニューヨークには街の至るところに巨大な

ゴミ箱があって、ゴミ箱のない日本から行った

ぼくにとってとても嬉しかった)

に捨てちゃった。

おのれ、アラブ兄弟め。

チェルシーマーケットに展示されていたアンティーク

チェルシーマーケットに展示されていたアンティーク