新横浜から横浜線に乗り換えた。

座席に座っている男性が、そばのようなものをひざの上に置いたビニール袋から

すすっている。

衝撃だった。

そのたたずまいからは、「何かを捨ててしまった人間」の空気が放射されていた。

と、右のほうから、幼児が英語のフレーズを暗唱している声が聞こえてきた。

ドア前に立っている、幼稚園児だ。

あの子は、「何かを得ようとしている」。

ぼくの真ん前に立っている男性が、急にステップを踏み出した。

まるで夢の中の出来事のように、これらが次々にやってきた。

少なくともぼくが子どもの頃は、いや、つい最近まで、朝の9時の通勤電車内で

大の大人がそばをすすることはなかった。

彼には希望がなかった。

では、英語のフレーズを暗唱している彼女に希望は満ちているかというと、

ぼくの感じる限り、不安のほうが大きい。

日本は、いったいこれからどうなってしまうんだろう。

少なくとも、「いい方向」へは、間違いなく動いていない。

うーん。なんとかしなければ・・・と思っていたら、アナウンスが

「次は終点、東神奈川です」

という。

ヒガシカナガワ?

馴染みのない駅名だし、終点?

ぼくは横浜へ行かなきゃならない。

あわてて現実に戻った。