21世紀後半、人類は不死を手に入れた。
クローン技術のおかげで、いま使っている身体にガタがきたら、
普段から用意し更新している記憶のバックアップデータを新しいクローン
肉体にインストールし、新品になって生き直すことができる。
「この世の中、つまんねーな!」と思ったら、「デッドヘッド」
という冬眠をして、2000年くらい寝ていればいい。
*でも、これに近いことは既にできそうな気がする。
自分って誰? というとき、自分のinterest(興味関心)は
ソーシャルメディア(PinterestとかStumbleUponとか)に
登録しているし、必要な書類やデータはクラウドに放り込んであるし、
自分のことを自分以上によく知っているのは実のところGoogle
だったりするかもしれない(笑)。
エネルギー問題が解決したこともあり、お金のために働く
ことは不要になった。通貨はなくなった。
つまり、人類は不老不死を手に入れ、お金の問題から解放されたのだ。
その世界では、デバイスを使わなくても人はHyperlink能力をもっていて、
瞬時にさまざまな人・情報にリンクできる。
人間そのものがSNSになる。
さて、こんな世界、楽しいか?
登場人物は、言う。
「お金が足りなくなったらどうしよう? 病気になったり、不慮のバス事故に
あったりしたらどうしよう? ・・・といった感情をもう、忘れてしまった。
『ここ!という時勝負に打って出る』感覚も忘れた。
それはちょうど麻薬中毒患者がシラフだった時
のことを思い出せないように」
「実際のところ、本当にキツいのは、この世界で生き続けるということだ」
お金がないなら、何が通貨になるのか。
Whuffie(ウッフィー)だ。ソーシャルの世界で使われている「ウッフィー」は、
Cory Doctorow(→)初の長編SF小説”Down and Out in the Magic Kingdom”
から生まれた。このリンクから無料で全文ダウンロードできます(→)。
次のセリフが、まさに、いまの世界を表現するような気がしてならない。
「フリー・エネルギーがなかったら? デッドヘッドがなかったら?
もしあったとしても、重篤な病人限定だったりしたら?
ハイパーリンクの力がなかったら? ウッフィーがなかったら?
ぼくはいいと思う。どんな世界であっても、それはもう一つの世界。
素晴らしいものなんだ」
いまの世界。人類にとって「もう一つの世界」なのかもしれない。
でも、それはそれで素晴らしい。
そう、思う。