「父ほど幸福な人生を送った人を、わたしはほかに知りません」
最後の一文に、泣いた。
本のタイトル『あたまにつまった石ころが』に惹かれて買った絵本。
「まるでぼくみたい」
「いろんな思考があたまの中につまりすぎ」
という思いで、買ったんだよね。
で、レジに持っていったらマダム(こう呼びたくなる女店主なんだ)が
「ああ。これをお選びになった・・・」
「ええ。自分のことを言われてるみたいで(笑)」
「?」
「考え過ぎという」
「でも、好きなことをおやりになったら、いいんですよ」
あ。そういう本なんだ。マダムは当然のように、本の中身やテーマを理解している!
さすが、すごい!
昨日の直観旅行、普通なら15分で着いてしまう阪急うめだ駅まで30分かけて
ゆーっくり歩いた。
Suicaが使えるので、行き先を決めずに、とりあえず神戸線ホームへ向かう。
特急の発車時刻のようで、みんながエスカレーターを走り上がっていく。
ぼくは彼らに道を譲り、特急に間に合わないならそれでよし、来た電車に乗ろうと
思っていたので、ゆーったり。これってなんだか定年退職したおとーさんみたいね。
岡本で下りた。周囲は甲南女子大の生徒がいっぱい。ちょうど登校(大学もこういうのかな)
時間と重なったみたいで。上品だね、彼女たち。
・・・と、ぼくの行動はゆっくりなんだけど、このままだと話が終わらないから、ここから先送りするね・・・
岡本には何かあったよなあ、と思ったら、そうそう、ひつじ書房。
道きいた人に教えられたのがひつじ茶房だったりと落語みたいな体験をしつつ、ようやく
到着したのが、先ほどのマダムがいるお店、
JR摂津本山駅すぐのひつじ書房に到着。
ここは児童図書専門店で、1975年創業の老舗だ。
「子どもたちには、ほんとうに良い本を読んでもらいたいんですよ。
本を好きになってもらいたいから」
絵本は、子どもたちのためだけの本ではない。大人にとっても、滋養豊かなものだ。
ユング派精神分析の泰斗・河合隼雄先生は絵本をよく読んでおられた。
ひつじ書房は児童書を販売するプレースであり、かつ、児童書というものの
人生に果たす役割を提案してくれる、「児童書にまつわるサムシング」が
濃密に漂う空間(プレース)でもある。同じ本は、おそらくネット書店でも売っている。
しかし、「読む体験」は全く違ってくる。ぼくは本を読みながら、ひつじ書房の
空気、素敵なステンドグラス、マダムとの会話を思い出していた。
プレースは体験をも、形成するのだ。