1. 金儲けなんて、簡単だ

拙著『共感企業』(2010)でドラッカーの言葉を引用している。

・企業を利益によって定義し説明することはできない。

・企業とは何かを聞けば、ほとんどの企業人が営利組織と答える。

経済学者もそう答える。だがこの答えは、間違っているだけではなく的はずれである。

・利潤最大化のコンセプトには意味がない。

・利益は企業や企業活動にとって、目的ではなく条件である。利益は、企業活動や企業の

意思決定にとって、原因や理由や根拠ではなく、その妥当性の判定基準となるものである。

同感だ。

書店で「ビジネス書」というと、いまだに

「バカ売れ」

とか

「儲かる」「稼ぐ」

とかいう品のない言葉がタイトルに入った本ばかりだ。

そしてそういう本が売れる。

レベルが低い。

誤解を恐れずに言うと、

お金儲けなんて、簡単なのだ。

合理的・論理的に考え、

お金儲けの言語と文法(会計)に沿って

お金を扱えば、それで儲かる。

たとえば、損益分岐点売上高を出そうと思えば、

αを変動費率として

固定費を(1-α)で割れば出る。

だれがやっても同じ答えだ。

固定費と変動費の振り分けに間違えたとしても、感覚的にわかるはずだ。

そして、儲けたければ、変動費率を下げる。

なぜなら、数式で簡単にわかるように、変動費率で固定費が膨らむからである。

月100万固定費がかかるとする。家賃、光熱費・・・合計で100万。

だから100万稼げばいいかというとそうじゃない。

仮に変動費率が20%としよう。

1-0.2=0.8

100÷0.8=125

そう、125万に膨らんでしまうのだ。

役務を提供している「士業」やコンサルタントは、旅費交通費が鍵になる。

メーカーなど固定費型ビジネスは、とことん固定費化する。

そうすれば経営は安定する。

しかしこれらは数式、

しょせん、因果の世界である。

こうすれば、こうなる。

しかし、現実は因果だけではない。

相関もある。

ある企業の健康保険組合のデータを分析したら、

「残業の多い人の肝臓数値は健康的」

という面白い現象が見つかった。

これを因果で考えるとおかしなことになる。

そうかー。

残業しているから外に飲みに行く機会が少ない

  ↓

肝臓が健康なんだ

とか、勝手に因果関係を結べる。

だから何? ダカラナニ?

あくまで相関なのだ。

そういうこともあるんだなあ

でいいのだ。

話を戻す。

儲かっていないのは、上に書いた通り(*)

にできていないだけであり、

その通りにやれば、だれでもできる。

*合理的・論理的に考え、お金儲けの言語と文法(会計)

 に沿ってお金を扱えば、それで儲かる

企業は条件であるはずのお金を目的にしてしまったら

毎朝起きる意義がない。

「自分は常に事業の経営に任じては、その仕事が国家に必要であって、また

道理に合するようにして行きたいと心掛けて来た。たといその事業が微々たる

ものであろうとも、自分の利益は少額であるにしても、国家必要の事業を合理的に

経営すれば、心は常に楽しんで事に任じられる。ゆえに余は論語をもって商売上の

「バイブル」となし、孔子の道以外には一歩も出るまいと努めて来た。それから

余が事業上の見解としては、一個人に利益ある仕事よりも、多数社会を益して行くの

でなければならぬということを常に心していた。

(中略)

多く社会を益することでなくては、正径な事業とは言われない。仮に一個人のみ

大富豪になっても、社会の多数がために貧困に陥るような事業であったならば、

どんなものであろうか。いかにその人が富を積んでも、その幸福は継続されない

ではないか。ゆえに、国家多数の富を致す方法でなければいかぬというのである。」

(渋沢栄一、論語と算盤 から引用)

『共感企業』は、企業や組織の壁が柔らかく、アメーバのようになり、中にいる個人が

個と個でつながりあい協業して価値創造(共創)していく世界を描いた。

「大阪をシリコンバレーにする!」ビジョンのもと、2011年11月に葉山から大阪へ移住して

始めたMAIDO-international。

これをやりたかった。

ようやく実現しつつある。

2. MAIDO-internationalメンバー有志でIoT&Industrie4.0研究会

昨日(5/10)、MAIDO-internationalメンバー有志でIoT&Industrie4.0研究会をやった。

参加企業は多業種にわたる。

大手住宅メーカー、高級チョコレートメーカー、工業用ブラシメーカー、変圧器メーカー、

ヒーターメーカー、医療コンサルティングベンチャー、女性下着ブランド、産業計器メーカー・・・

12社15名が参加した。

社会変化に機会を見つけようと楽しい議論をした。

インダストリー4.0では、家が、チョコレートが、ブラシが、変圧器が、

ヒーターが、ブラジャーが、計器が

スマホになる。

いやー。刺激的だった。

キャッシュポイントが劇的に変わる。

モノを販売しているだけでは限界があって、モノにいかにして

intelligence(有益な情報)とinternet(相互リンク)を乗っけるか。

これが本当の

I (intelligence&internet)

on

T(things&technologies)

= IoT

だ。

変化には二つの「O」がある

Opportunities(機会)

  と

Obstacles(障壁)

である。

ぼくたちは機会に焦点を合わせよう、仮に障壁があるとしても

それは必要な「圧」として考えようと捉えた。

大きな社会変化に機会を見つけ、イノベーションを起こした先達は、

小さなちまちましたことにこだわらず、まずグランドデザインを描いた。

3. グランドデザインを描く

ドイツのジーメンス(1816-1892)は当時のヨーロッパで見られた

大都市の形成に伴って「家から職場へ通勤する」という新しい

ライフスタイルが生まれつつあることを機会と見た。

従来の職住接近が崩壊することにビジネスチャンスを発見したのだ。

当時の主な移動手段は馬車だった。

通勤に馬車は不便だ。もっと多くの人がまとめて乗れる乗り物が必要とされるだろう。

電力使用の乗り物を開発しよう。

そこで電車という発想を得て、動力としての発電機を発明した。

発電機を発明し、その用途や出口を探った結果電車が生まれたのではない。

同じくアメリカのエジソン(1847-1931)は大都市が生まれたなら照明が現在のように

ローソクでは不都合があろうと考えた。何より火災の心配もある。

人が密集した場所では危険である。

電力を使った照明なら安全だ。

そこで電球を発明した。同じ頃、スワンも発明していた。だけではなく合計23人が

同じ着想をしていた。

しかし、「大都市の照明」というグランドデザインを描いたのはエジソンだった。

電球を発明し、出口に照明を見出したのではない。

エジソンが生んだ会社は現在もGEとして、30万人を雇用している。

そしてGEは「インダストリアル・インターネット」をビジョンに、

インダストリー4.0の急先鋒だ。

同社の140万の医療機器と28000基のジェットエンジンを含む

総額1兆ドルのアセット(設備や機器)に対し、1000万のセンサーを組み込んでいる。

これによって、日々5000万件のデータを収集、分析している。データモニタリングの

結果、アセットの効率稼働と、予期せぬダウンを予防している。

たとえば航空エンジンは航空機メーカーに収めるが、所有権はGEにある。

航空機メーカーはエンジンが提供する機能の使用権を購入する。

航空機メーカーは、エンジンを所有したいのではない。

エンジンが快適に所定の機能を提供してくれればいいのだ。

GEはモニタリングの結果、不具合を発見した場合、可能なら遠隔操作で、

それが無理な場合のみ、飛行場に出向いて保全、修理する。

毎日、毎時、毎秒、ノウハウが蓄積されていく。

これによって、GE製ではない他社製のエンジンでもモニタリング&メンテナンスサービスを

請け負うことができる。

オーティス(1811-1861)は落下防止装置を発明した。

これによってエレベーターが実用的になった。

エレベーターのおかげで「タテ」にビルを伸ばすことができた。高層ビルを可能にしたのはエレベーターである。

高層ビルのおかげで、単位面積あたりの人員収容容量が増え、大企業・大組織の存在が可能になった。

大事なことは、社会変化から生まれる機会に焦点を合わせた大きな絵、グランドデザインだ。

その商いによって、社会にどんなインパクトを与えるか。

子どもたちにどんな社会を残せるか。

そこまで考えずして、目の前の「稼ぐ」「儲ける」だけにチマチマしていたら、

情けないだろう。

4. 子どもたちに何を残せるか

江戸時代、なにわ八百八橋と言われたが、実際の橋の数は200くらいだった。

いまも残る淀屋橋は豪商「淀屋」が商いに必要だから自分のお金で建造した。

200のうち幕府がつくった橋はわずか12。残り188の橋は商人(あきんど)たちが

自分のお金で建造した。

お上に頼ってはいけない。

お上を食わせるくらいでなければならない。

最後にもう一度、いう。

まだお金儲けを目的に商売やってんの?

個と個がつながる柔らかな協業のイメージ

個と個がつながる柔らかな協業のイメージ