ぼくが豆タン攻撃を受けている間、室外では室外でおかしなことが
起こっていたらしい。ZONOと奥さんが待っている場所は、店の入り口が
見晴らせるところらしく、ぼくたちの後もお客さんが来た。
「4人、いけますか?」
中国オババ「ダイジョウブ!」
実のところ、そんなに施術師なんて、いないのである。
いないのに、オババは、来た客を絶対逃さないのである。
すぐにあちこちに電話し、速射砲会話で「仕事人」をかき集め始めた。
やがてやってきたお兄さんを見て、ZONOと奥さんは椅子から転げ落ち
そうになった。何と! 中華料理のエプロンをした兄ちゃんなのだ。
オババが店の制服をウリ、と渡すと、兄ちゃんは着替え始めた。
「きっとあの兄ちゃん、けーちゃんとこに行くんだよ」
と二人は笑い合っていたらしいが、おあいにくさま、ぼくは豆タンだ。
そういえば、この店の施術師たち、よくよく見ると、純粋にマッサージ師
然とした人は見当たらない。みんな、何らかの職業との副業っぽいの
である。ある人はアカスリ、ある人は****、ある人は・・・・。
つまり、この店は「NOと言わないマッサージ店」なのである。
ある意味、傑作で、見上げたものなのである。
「中華料理のエプロンを脱いで・・・」のくだり、帰りの
タクシー車内で爆笑しながらZONOたちが話すのだが、
ぼくは豆タンの後遺症で痛くて声が出なかった。
普段なら一番先にノッてくるはずのぼくがおとなしいものだから、
みんなが異常に気付いた、というわけなのであった。
こうして、広島の夜は更けていく。