海外遠征に備え、歯の治療中で、抗生物質を薬にもらったのを飲むと
眠くてたまらない。眠いが、寝るわけにはいかんので、何かやっている。
何度見ても飽きない映画というのがあって、それが『かもめ食堂』だ。
主人公の小林聡美演じるサチエがやはり魅力的なのだが、今回
久しぶりに見返してみて、気になったのがミドリ(片桐はいり)。
彼女は実にうまく、「外国に来たばかりの働く日本人」を演じている。
それはどういうことかというと、
・何かをせずにはいられない
のである。
・提案せずにはいられない
・メニュー開発せずにはいられない
・販促せずにはいられない
のだ。
ここが、「フィンランドに自分流で住みつく」腹をくくったサチエと大いに
違うところ。
ミドリは、客足がさっぱりなかもめ食堂の経営を心配して、「日本人観光客
が来てくれるようにガイドブックなどに掲載されるようにしたらどうか」
と提案する。
しかし、サチエがしたいことは、食堂を日本人観光客で一杯にすること
ではないのだ。現地のフィンランド人が、「ここ、おいしいね」と贔屓客に
なってくれることなのである。
ぐるなびや何とかに掲載されることで、エネルギーが違う方向に
向いてしまっている多くの日本のレストラン経営者も、ここんとこ、
よく見てほしいなあ、と思ったりする。
ともあれ、日本人が外国に行ったばかりの時によくする行動が
「何かしたくなる」ということを思い出させてくれて、面白かった。
また、ミドリが外国へ出よう、と決意した理由というのも、深い人間関係の
もつれなんだろうなあ、と思わせるセリフの数々、片桐はいりの演技も
素晴らしい。
一方、同じく、「日本から来たばかり」のもたいまさこは、100%、個性を
変えようとしない(笑)。日本にいたときと同じ生活をしている。
このあたりも、映画の見どころだ。
とにかく、この映画を見ると、やたらと腹が減る。
イッタラの食器や素敵なフォルムデザインのテーブル、
小林聡美の合気道流の呼吸や膝行も見どころです。