メルマガSurfin’(→クリック!)がスターバックスについて初めて書いたのは、1998年8月13日発行号だ。
当時スタバは珍しかった。
大阪では駅前丸ビル一階にあったのが最初じゃなかったかな?
ぼくはその前、1991年にアメリカLAX空港内にある店舗で脳天がしびれる
くらいに感動し、いっぺんにスタバファンになった。
バリスタが熱心に珈琲について語りかけるその情熱に打たれ、店内を満たす珈琲の香りに打たれ、
調度品、ブランドシンボルカラーのグリーンに打たれ、店内の音楽に打たれ、
そのスタバ体験から生まれたコンセプトが「五感マーケティング」なのだ。
「五感マーケティング」というコンセプトを創ったのはだれあろうこのわしなのである。
スタバは、創業者ハワード・シュルツの言葉を借りるなら、
「人々とコーヒーの関係を進化させた」のだ。
ところが、その後スタバは急速に店舗を増やし、拡大路線をひた走る。
2000年、マンハッタンはチェルシーに住み始めた頃、最も激しかった記憶がある。
グリニッチヴィレッジといわず、SOHOといわず、ちょっとでも隙間があったら
出店していた記憶がある。
「これはあまりに拡大しすぎで、ブランドの求心力が失われるのではないか?」
と危惧した。
実際、「スターバックスの五感に訴えかける体験=スターバックス・エクスペリエンス」
は摩耗し始めていた。
店舗内では珈琲の香りよりサンドウィッチのチーズの香りが勝っていたし、
「何か違う」と首をひねらざるを得なかった。
当時、ぼくは「自分たちの音楽が聞こえなくなったら」というタイトルで、
ビートルズがライブ活動末期に観客の歓声に自分たちの音楽が聞こえなくなって
自分たち自身が楽しめなくなったというエピソードとスタバの現状を重ね合わせ、
疑問に思う内容のSurfin’を書いている。
台北のスタバ店内で見つけ、
気になったのでこのたび日本語訳を手に入れた
創業者ハワード・シュルツ『スターバックス 再生物語 つながりを育む経営』
(月沢李歌子訳、徳間書店)を読むと、やはり、この時期、スタバは迷走を始
めていたことがわかる。
この本は、自ら創業し、愛情込めて育て上げたブランド(スターバックス)
が生命を失い始めた時、もう一度ブランドの約束に戻り、苦しい決断を重ね、
行動した経営者の肉声である。
商人とはそういうものだ。靴やナイフやコーヒーといった日用品に新たな
命を吹き込み、自分たちが作り出すものがほかの人たちを感動させることを
信じている。自分たちが感動したように。p.11
多くの人がパソコン画面に向かってひとりを過ごす時代に人と人とのつながり
を大切にし、多くの人が多くの問題によって対立している時代に人と人との
関係を築くことを求め、無駄なことは当たり前のように切り捨てられる時代に、
たとえコストがかかっても倫理的に行動する。これは誇るべき
探求であり、スターバックスの根幹だった。 p.12
一口に「ブランド創造」というけれど、この本の物語は、
「いったん創造されたブランドの再生」の話だ。
これは戦略や戦術の話ではない。大いに「情熱」の問題になってくる。
『つまりこういうことだ! ブランドの授業』(日経ビジネス人文庫→クリック!)で、
「原始的なパッション」について書いた。論理もいいが、
「何が何でもやり遂げる! やり遂げてみせる!」という原始的な
炎をメラメラと燃やさない限り、ブランドなんか、できはしない。
スタバの再生も、パッション抜きにはなし得なかったのだと知って、
これまで以上にスタバが大好きになった。
『スターバックス 再生物語 つながりを育む経営』おすすめの一冊です。
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何しろ市電に乗れる人数限定なので、たったの15名様です。
うち既に何人かお申し込みを戴いているので、早い者勝ち。
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*メルマガ「電脳市場本舗〜Marketing Surfin’」2011/6/23発行を転載しました