年末である。
落語の傑作に、年末の商人(あきんど)を題材にしたものがある。
東の「芝浜」。これは談志家元伝家の宝刀、いつ聴いてもいい。
通常は夫婦愛について語られることが多いが、ぼくは青年商人のサクセスストーリーとして
楽しんでいる。勉強にもなる。
「支払いは先に、向こうさん(売り先からの代金回収)は、まあ、
いろいろ事情もあるだろうからさ・・・」
と、払うべきものはとっとと支払い、未回収は待ってやる、という商いの姿勢。
だからぼくは常に支払いは速攻でする。
・・・と思っていたら、昨夜遅く帰宅するとちっともセクシーじゃないデザインの郵便物が。
こういうのにロクなもんはないので、いやーな感じしながら封を切るとやはりロクなもの
じゃなくて、「国民健康保険の督促状」ときた。督促ってくらいだから、一度請求したのに
ぼくが支払いをしていない、ということだが身に覚えがない。出張疲れのウニアタマで考える
に、たぶん、銀行口座振替手続きでぼくが間違った印鑑を押したため、やり直しとなり、
それが理由で引き落としができなかったんだろう。それならそれでそう言ってくれりゃ
気持ちよくその場で支払うものを「督促状」、しかも手数料20円加算されている。
これは北区役所へ行って、事情を説明し、容疑を晴らした上で口座振替手続きが済んで
いるのかどうか確認せねばなるまい、と、区役所へ行った。済んでいた。きっちり手数料20円も
気持ちよく支払ってきたよ。
扇町公園を横切りながら、西の落語で歳末にふさわしいといえば、やはり米朝師匠の「百年目」。
大旦那が番頭さんの一年の労をねぎらって言う。
「あんたのおかげでな、今年も大福帳を真っ黒にすることができました・・・」
要するに、大福帳を黒くするほど売上がたくさんあった、ということだ。
「書き入れ時」の書き入れは、大福帳のことだから。
「芝浜」といい、「百年目」といい、いまのぼくたちが学ぶべき商いの大切なこと
が満載だ。
商いを「ビジネス」といい、アメリカMBA的な分析的アプローチをし始めてから
日本企業は経営力が落ちたと思う。「アタマの経営」は、あかん!
では、「芝浜」や「百年目」の教える商人(あきんど)の経営は何かというと、
「感の経営」と呼ぶのがぴったりじゃないだろうか。
「感動、感激、感謝、感情、感性」の「感」。
そんなことをあれこれ考え、「もう年末やなあ」と「感慨」にふけっていたら、
たまらずお疲れさんのビールが飲みたくなってきた。
うん! 「感の経営」というワードも得たことやし、JOYWOWは
今日からホリデー。帰ったら冷蔵庫からビールを出して飲もう!
・・・そう思ったけど、やっぱやめることにした。
夢になるといけねえ。