強いブランドにするためにはストーリーが不可欠だけど、
でも、ストーリーがあるだけでは完全じゃない。
たとえば、「このパンケーキは創業者が毎朝母親に焼いてもらった
ものを忠実に再現しました」というのはストーリーとして良いが、
しかし、あと一歩必要だ。
マーケティングの秘訣は「顧客が顧客でなくなること」。
つまり、「ブランド体験が自分ごと=自分のもの」になったとき、
顧客は顧客でなくなる。
神戸岡本のひつじ書房(→)は児童書専門店老舗 (since 1975) だ。
幼い頃、母親に連れられてここで絵本を選んだ楽しさをもっている人に
とって、ひつじ書房は「特別な場所」になっている。
ぼくにとっては、昔つきあっていたガールフレンドのともだちが
ここでアルバイトをしていて、遊びに行った場所だ。
「ガールフレンドのともだち」という語感もまた、若かった
当時へと時間旅行させてくれる。だからぼくにとって特別な場所だ。
マンハッタンのBooks of Wonder(→)もまた、「体験者」にとっては
「シェアできる文化的文脈」にまで育っているはず。
「ああ、あそこに連れて行ってもらうのが楽しみでね」
「お話会が毎日あったらいいのに、と思ったわ」
という会話が初対面同士成立したら、その段階で、ブランドは
「自分のもの」になる。
Little Golden Booksはぼくにとって、子どもと過ごした夢のような
時間へとタイムトリップさせてくれる魔法だ。単なる英語の絵本ではない。
本扉裏にある自分の名前を書くスペースにある幼かった子どもの文字を
見るたび、子どもではなく親であるぼく自身が本を愛おしく、いまのこの
時間を特別なものにしてくれる。
ブランドはストーリーを作るだけではなく、そこに顧客が自分自身を投影
できるようになって初めて強くなる。
*This post was inspired by Seth Godin. Thanks a lot to Seth!(→).