2回目鑑賞。
このシリーズは全作品観ているが、今作は中で最高傑作だと思う。
エンタティメントの定石をすべて踏まえている。
ヒットの定石を探るのは職業上必要なことだから、今度はノートとペンを
手に、勉強のために劇場に座ったというわけである。
お盆ということもあって満席だ。
1. アタマサビで、つかむ:飛行機のシーン いきなりおいしいシーン
2. 背景の説明描写は最低限にとどめる
3. おなじみの音楽、BGMは変えない:音楽によってシーンの意図がより伝わる
シーンの意図とは、「ここはハラハラする場面ですよ」とか「観光気分で楽しんでください」とか
4. 異国情緒を味わえるロケ地:今回はウィーン、ウィーンオペラ、モロッコ
5. なじみある光景でも、違った顔を見せる魅力:ロンドン
6. 魅力的な女スパイ。しかも敵か味方か不明
7. カーチェイス:主人公一人にさせるのではなく、助手席に相棒を乗せ、彼が
「オレは大丈夫!」「ヒャー!!」「撃ってきた!」など
一見平凡だが、実は観客が思っていることを代わりに叫ばせることで
観客の共感度・画面への没入度を高める効果
8. オートバイチェイス:爆音 大画面ならではの追体験的、ゲーム的画面の作り方をする
観客は自分もオートバイに乗っている気分になる
9. 物理的法則に忠実:転ぶと痛いし、ぶつかるとケガするという律儀さが映画にリアルを
加えている
10. オートバイチェイスの終わらせ方が秀逸。アタマいい。ネタバレになるので書きませんが。
11. 水中のシーン。「なったらいやだな」の状況をしっかり起こしてくれる(笑)。
絶体絶命の状況になって、さて、どうやってここから脱出?
これも秀逸な解決法。
12. 運や偶然をうまくはさみこむ
13. 人混みの不気味さ:敵がどこにいるのか、どこから撃たれるかわからない不気味さ
14. 頭脳明晰なヒール(悪役):悪役はただの乱暴者ではいけない。敵に回すと怖いのは
アタマがすごくいい人。日本でいうならgacktとか井浦新とか。
たとえば『ダイ・ハード』1作目は、ブルース・ウィリスはどちらかというと
アタマは弱そうである。それより、テロリスト役のアラン・リックマン
がめちゃくちゃアタマ良さげで、こいつは少々のことではかなわない、
と思わせる。そこが良かったのである。
ショーン・ハリス演じるシンジケートのボスが冷酷そうで、しかも独特の
発声をしていて、不気味で、最高に良かった。
15. ITの徹底利用:タブレットはもちろん、スマホを自在に使いこなしている。
これは1996年のシリーズ第1作でマックブックを活用以来、映画のインフラと
して、お約束になっている。
16. 友情:少年ジャンプの定石にもある。「友情・努力・勝利」
このうち友情と勝利はわかりやすく描かれる。努力は、筋肉もりもりの
トム・クルーズや女優さんの肉体美で推測される。努力?
いや。プロフェッショナルとして、あたりまえの肉体マネジメント
なんだろうね。
17. 主人公の成功への絶対の自信:「失敗したら?」
「絶対戻ってくる!(I’ll make back)」
このmakeは、「作る」ではなく
「ある状態から別の状態に意図を持って変える」
という意味。
「practice makes perfect.」は「習うより慣れよ」ということわざだが
練習が完璧を生み出す、というニュアンスだ。
18. ラストは当然、絶体絶命の状況に放り込まれる。
そこからどうやって抜け出すか。
納得のいく抜けだし方が大事。
胸のすく解決法が示されている。
19. そして、悪役の最後。ここも、カタルシスが用意されていなければならない。
「あーーー、すっとした」
と観客が思って劇場を後にするように。
20. 映画本編が終わってから、メインキャストは名シーンと共に顔写真を。
おなじみのテーマ曲と共に。
定石中の定石をすべてしっかり踏まえている。
面白くないはずがない。