2001年10月1日初版第1刷発行。

2001年春、ニューヨークから日本に出張し、セミナージャパンツアーを

やっていた。テーマは「骨太マーケティング」。

アメリカに住んでみて、マーケティングや経営理論、MBA発祥の地である

にもかかわらず、サービスのポンコツさ、製品の貧弱さに驚き、

商売の原点に戻ろう、ふわふわしたもんじゃだめだ、

そう、骨太で行こう!

という呼びかけをしていた。

その後小泉内閣が「骨太の方針」というネーミングを出してきたので

いやになってこの表現はやめた。

3月、新宿の大きな会場でやった(→)。

400人は入っていたのではないか。

それをインプレス編集者が聞きに来てくれていて、

「本にしましょう!」

それが、このスロビだ。

執筆はニューヨークの自宅で、編集者との打ち合わせは

出張先の神戸異人館近くのカフェでやった覚えがある。

「スローなビジネス」というネーミングはインプレスの

『インターネットマガジン』編集長をやっていたZONOこと

倉園佳三と電話で決めた記憶がある。

ぼくはそのとき、都内のどこかのホテルにいた。

ニューヨークでの執筆は、毎日夕方4時までと決めていて、

その時間になると自宅ターワマンションの中にある

スポーツクラブが開館するから、階下へ下りて行って泳ぐ

ことにしていた。

当時、スロビの執筆と、『あなたが伸びれば、会社も伸びる!』翻訳を

同時にやっていた。

若いから、できたのかなあ。

写真のように、のちに日経ビジネス人文庫化され、また、ハングル語に翻訳

されて韓国でも出版された。評判良かったそうだが、ほんとかどうかはわからない。

あとがきが好きなので、引用します(p.229-230)。

(ここから)

 発想につまったり、新しい解決を求めたりするとき、セントラルパークに行く。

幸い、歩いていける近所だ。

 パーク内に、シープメドゥ(Sheep Meadow)という、とんでもなく広い

芝生の広場がある。腰をおろした。スパニッシュらしい若者が二人、

フリスビーをしている。二人の距離は相当離れており、およそ100メートル、

飛ばしっこしている。地面すれすれを一直線に投げたり、指定した場所へ

正確に落としたり、山なりの放物線を描いたり、フリスビー一つでこれ

だけ楽しめるものなのだな、とわくわくした。真ん中のあいたリングタイプ

だから、手のかわりに首で受けるという離れ技もできる。気がつくと一時間、

私はフリスビーを見ていた。目で追うだけで、自分では投げなかったけれど、

やったのと同じ充実感があった。

 なぜかふと、サラリーマン時代の企画会議を思い出した。私は、企画書を

手に、自信満々で、説明していた。最後、必要な予算を口にした。

それは、通常の4倍もの高額なものだった。

「おれの企画は、『前例』や『常識』から、ぶっ飛んでいるんだ。どうだ」

という自負と、小さなヒロイズムが、顔に出ていたことだろう。

上司は、静かに言った。

「それでいいのか」

「は?」

「その金額で、いいのか。足りなくないのか」

「は、はあ・・・」

 拍子ぬけ。

 こういうことだった。

上司は、その予算さえ、そのお金さえあれば、企画が成功するのかと

指摘したのだ。まるで予算だけがうまくいけばそれで企画は成功する、

そう言いたいかのような私の考えを、諭してくれたのである。

企画を成功させる肝は何なんだ、Whatは何だ、と教えてくれたの

だった。

 本書の根底に流れている思想は、自分で考えることの重要性である。

「〜がないからだめだ」「〜さえあればうまくいくのに」

という、いわば「道具を使った成功の法則」ではなく、

「とことん自力で考え抜いて成功をつかみとる」という姿勢。

ドッグイヤー、スピード経営などの言葉に追い立てられ、

とかくスピードに流されてばかりいては、もぐらたたき=フローの知

がせいぜいで、ゆっくり、じっくり考える=ストックの知を啓(ひら)く

ことができない。スローに、行きたい。

(ここまで)

自分でも好きな本だ。

装丁は好きじゃないけど。

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