ブラックにも2種類あって、あたまのいいスマートなブラックと
ただ下品なだけのブラック。
シンプソンズは前者で、だから大好き。
生まれて初めて「カネ返せ〜!」と
叫びたくなったその映画(→)は後者だ。
日本でも観客を集めているそうだが、だれかの名言にあったように
「一番うまいのが一番売れているというのなら、カップヌードルが
一番うまいラーメンということになる」
正直、日本人の大半はあの映画の1/10も理解できないのではないか。
アメリカン・コミックやらB級映画やらのディテールを茶化したネタばかり
だからだ。例えて言えば、「『笑っていいとも』いいとも青年隊」を
ネタにするようなもので、日本人でさえ一部の人にしかわからないし、
外国人には、まず、わからない。
ぼくはわからなかった。
日本人は
・自分だけがわからないと言うのは恥ずかしい
・これだけヒットしているのだから、面白いと言わなければならない
と思い込んで、何も言わないのかもしれない。
ぼくの周囲の観客、映画が始まる前は期待にワクワクとはしゃいでいたが、
上映中、笑い声はほとんど聞こえなかったし、終わって劇場を出るとき、
みんなお通夜みたいな顔をしていた。毒にやられたのである。低質な毒に。
ブラックもいい、おふざけも好きだ。
しかし、立ち位置(あり方=being)が気に入らない。
だから、あの映画を、ぼくはマイナス評価しかできない。
あまりにも不完全燃焼だったので、もう一本他の映画を観ようかと
思ったが観たい映画がない。仕方ないので、タワーレコードへ行き、
「ウディ・アレンの、昨年公開された、『パリ』がタイトルに入っている
映画はもうDVDになってましたっけ?」
という「あいまい検索」にこころよく応じてくれ、
『ミッドナイト・イン・パリ』を入手した。Thanks, Tower Records!
帰宅し、むさぼるように観て、納得。
ウディ・アレンは年を取るに従って「人畜有害」なじいさんに
なって、正直「好きの目盛り」が下がっていたのだが、
ちょっとだけ見直した。
往年ほどの「あっという感」はないのだが。
ともあれ、ようやくこの映画で、精神の均衡が取れた。
スコット・フィッツジェラルド、ダリ、ヘミングウェイ、ロートレック、ゴーギャン、
ピカソ、マン・レイ・・・・が「動いて」「話し出す」。
楽しかった。
ヘミングウェイはやはりかっこ良かった。
ひきつづき、録画しておいたNHKの力作『メイド・イン・ジャパン』
初回を観て、納得。
『ミッドナイト・イン・パリ』についてはいずれここ(→)
に書くと思うので、しばし、お待ちを。
いやー。それにしても、後味悪すぎて、他の映画で解毒したくなる映画なんて、
初めて。