愛聴盤の一つ。
コカ・コーラのCFソングを1962年から1989年まで編集してまとめた
クロニクルだ。1962年、日本で初めてテレビコマーシャルをした
時から、バブル真っ盛りまでの日本の社会風俗史として楽しめる。
また、「いま、あの人はどこ行っちゃったんだろう」というアーティスト
もいる。
コマーシャルに使われる楽曲だから、「人畜無害」なメロディ、歌詞だ。
70年代風に言えば「イージーリスニング」な曲が続いていく。
そんな中、いきなりすごい風圧で語りかけてくる男のボーカル。
矢沢永吉。
永ちゃんがまだ20代後半か30代始めの若い頃だが、根性が違う。声のオーラが違う。
「オレ、歌で金稼ぎますから。生活かかってますから、ヨロシク!」
という空気圧バンバンやってくる。
おそらく、このへんが、自分の置かれた現状に満足できない当時の若者の
ハートに響いたんだろう(そのうちの一人がぼくなのだが)。
銭湯には26歳まで通っていて、そこで小学校からの同級生のコバヤシ君と
よく会った。長距離トラックの運転手をやっていて、若くしてナースと結婚して、
子どももいた。ぼくがキャロルを教えてもらったのはコバヤシ君からだ。
コバヤシ君は、「いかにエーちゃんがすごいか」をえんえんと湯船につかりながら
話した。ハワイに別荘がある。屋根に「E.YAZAWA」と書いてある。
「何でそんなに金持ちなん?」と聞いたら、「印税」だと教えてくれた。
ぼくが印税という仕組みを知ったのはコバヤシ君からだ。
成り上がり空気圧が伝染したのも、コバヤシ君からだ。
コバヤシ君、もう30年以上会ってないが、いまはどこでどうしているんだろう。
時々、エーちゃんの曲を聴きながら、コバヤシ君のことを思い出す。