テレビを見ていたら、あるビール会社の開発担当者が出ていた。
彼が研究しているのはノンアルコールビールである。
ノンアルコールビール?
「あるやん!」
思わず画面にツッコミを入れてしまった。
彼は材料の配合やら、何やらを毎日一所懸命試行錯誤しているらしい。
とても良い人に見える。
会社の空気も、いい。
しかし。
これでいいのか?
もちろん、彼のビール会社の製品ラインアップにノンアルコールビールは
「まだない」のかもしれない。
「まだない」から、「ラインアップに加える」ために開発している
のだろう。
でもそれって、月島でもんじゃ焼き屋を新たに一軒開店します、と、汗流して
準備している人とどう違うの?
彼の人生の大切な時間が、
電子顕微鏡で見なければ違いのわからない「+1」のために費やされる
のが、果てしなくもったいなく思えた。
企業のR&D(研究開発室)からロクなものが生まれないのは
名作『イノベーションのジレンマ』内でもクレイトン・クリステンセンが言っている
通り。
理由は、上司決裁があるから。
上司はその上司の顔色を見て決める。
Yes/Noは、上司の上司次第。
ところがもともとイノベーションは、Yes/Noのわからない世界、
混沌、カオスからしか生まれない。
+1は、決済がおりやすい。
実績、前例があるからだ。
ノンアルコールビールを一所懸命作るより、
「ノンビールアルコールができたのだ!」
とシャレで叫んだほうがよほど面白い。
+1は、やめよう。


コメント
コメント一覧 (4件)
ついつい実績、経験に判断を委ねることが多い。でも、それだと実績、経験以上のものは生まれない。
大きな失敗はないかもしれないが、大きな成功はあり得ませんね。
大きなイノベーションでなくても、プチ・イノベーションでいいと思います。
でも、プチ・イノは、実績や経験だけからは生まれず、視点を転換することからしか
出てこないと思います。
なんだか昔の私もそんな哀れな担当者だったなぁと思い、昔話を…。その昔、新業態担当をしていた頃のお話です。
血気盛ん、クソ生意気な小僧の私が作ったプランを、会社のゴタゴタ以降に急に上司になった、同じ部門の大先輩オールスターズが作った既存業態の焼き直しプランとコンペに。
結果はご想像の通り、木っ端微塵に(笑)
わかりやすい自社ブランドの焼き直しが採用された理由は、期間が限られており、チェーンとして加盟店にも理解してもらいやすい、とかの理由だったでしょうか、あまりに馬鹿な話なので細かな記憶は飛んで行ってます…。
当時同じ施設に開業したのが、スープストックトーキョー。
見事に苦難を越え、しっかりブランドを作られました。
自社の店舗はその商業施設の集客が下火になり、それと同時に撤退。そのフォーマットの二号店はどこにも存在することはありせんでした。その後、もう一つ動かしていたプランをこのオールスターズに焼き直しされた店に、店長としてはめ込まれ、毎日文句ばっかり言ってたところを放出されてまさかの本体の販促担当者に。
今があるので、感謝すべきかもですね(笑)
創業者が築いた一つの成功体験で大きくなった会社ですが、新業態が成功することがないのは経営会議に通りやすいプランを作ろうとする、役員の人形みたいな人達が量産され、そして組織が出来上がるから。失敗しても我慢してれば何処かに戻れちゃうんですね。
勿論、私が作ったプランもなかなかにハチャメチャ、ほんとに開発できるの?ってくらい、新しいこと満載でしたが(^_^;)
当時の私は社内政治なんてもの、全く興味もありませんでしたし、そんな事を乗り越えるくらい懐が深い訳でもなく。ただただ熱く『食事する空間を面白く、お客さまも参加できる店』を追い求めていた気がします。
この原体験があって、マーケティングやブランディングに興味を持ち、数年後、師匠の本と出会うことになりました。
TM、ぼくも大組織にいたのでよくわかります。
いまから振り返ってみると、
「アイデアが大組織で採用されるか否かは、そのアイデアの質とは全く関係ない」
という結構ファンキーな(いまだからファンキーと呼べますが、当事者にとっては深刻な(笑))
真実です。
そう、アイデアの品質が良いから採用され、だめだから不採用、ではないのです。
組織内の摩訶不思議な力学で、決まります。
おー、いやだいやだ。二度とあんな不健康な場所には戻りたくないよー。
JOYWOWも組織をできるだけ作らないようにしているのは、あの悪夢があるからです。