若い頃着ていたツイードのジャケットを引っ張り出してみた。
お気に入りで、母との思い出がある大事な一品だから、捨てられない。
名古屋出張に着て行った。
新幹線の中で気づいたのだが、ボタンがゆるんでしまっている。
定宿にしている名古屋観光ホテルで、顔なじみのベルの男性に
相談してみた。
彼は笑顔で、「承知いたしました。なんとかいたしましょう」
翌朝、ボタンはきれいに止めて仕上がってきた。
費用? ゼロ。
出張で国内外あちこちに泊まるが、現在のところ、名古屋観光ホテル
がぼくの中では一番だ。
理由は、ここには人間の、人間によるおもてなしがあるから。
「おもてなし」をホスピタリティと呼ぶようになってから、サービス業の劣化
が始まった気がする。
ホテルにとって、顧客とのタッチポイントは予約時の電話、チェックイン、
チェックアウトが一番わかりやすいし、腕の見せどころだ。
しかしながら、多くのホテルは予約はネットにさせているし、
チェックイン、チェックアウトを機械にさせている。
タッチポイントを捨てることになる。
ホテル・旅館業ビジネスの難しいところは、顧客は人間に伴うおもてなしを
求める。それはたとえチェーンのビジネスホテルであっても変わらない。
ところがホテル・旅館業の経営サイドからすれば、
「人が伴えば伴うほどコストがかかる」。
結果どうなるかというと、梅化が進む。
梅化というのは、ファスト化、つまり、安物化だ。
松竹梅の梅。
これはホテル業界に限らない。
日本全体が、梅化している。
近所のファミリーマートでペットボトルの水一本買って、徒歩2分の
会社に着いた頃には袋に穴が空いている。
管理人さんが二日休んでいたので、会社が入居しているマンション一階の
ゴミ箱は悲惨な状態になっている。
IKEAが分厚いカタログを全所帯に投函したものだから、嵩張る。
おかげで、普段以上に悲惨な状態だ。
22F建タワーマンションの全所帯にカタログ投函し、そのほぼ全数が捨てられたら
どんなことになるか。
IKEAは松の顔した梅だ。
実際は梅の価格、品質なのに、松のテイストを出している。
それは、スウェーデンっぽいよくわからない製品のネーミングや
店舗全体をパッケージする「北欧」がもたらすものだ。
今朝、必要あって、星のや京都に電話した。
ウェブサイトには2種類電話番号が書いてあって、一つは予約専用で
どっか、よくわからない場所につながるのがわかっていたから、
「夜間・緊急または当日の連絡用」とされている番号に電話した。
星のや竹富島につながった。
電話口の男性は「京都ですよね? こちら、竹富島につながっているのです。
申し訳ないのですが、ホームページに書いてございます電話番号が間違い
でして・・・」
ぼくも男性も笑いながら電話きったのだが、ウェブサイト間違えてるなら
直せよ。
直す気がない
のだろう(*)。
*いまパソコンでウェブサイトに行ったら、京都らしい番号になっている。
今朝見たのはスマホページだ。スマホページだけが竹富島の番号に
なっているのかもしれない。
直接、宿泊施設に電話されたら、コスト増につながる。
星のやは、顧客からのアクセスを基本、ネットに絞っている。
そして、電話は予約専用の番号一本で、全国の星のやを処理する。
これって、
松の顔した梅
ではないのか?
大事なタッチポイントを捨ててないか?
星のやは昔からどうも阪本家の家風に合わない。
でも世間ではちやほやされているブランドである。
そのあたり、ちょっと深堀りして語ってみたい。
経済ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之さんは
『セシルマクビー 感性の方程式』『カフェと日本人』
などの著作がある。ぼくは彼の冷静な分析のタッチが大好き
で、いつか一緒に仕事したいと願っていた。
このたび、11月16日月曜日(13時-16時)、横浜で、彼とコラボレーション・セミナーを
開催できる運びになった。
題して、
『ジャーナリスト高井尚之×阪本啓一コラボレーションセミナー:
国内観光の2強 「星野リゾート」 VS 「由布院」 を例に、
モノづくりとコトづくりを考える』
参加費用はお一人様1万円(税込)、当日お支払いください。
お申し込みはFacebookイベントページ(→)で「参加」ボタンを押すか、
JOYWOW事務局までメール(wow@joywow.jp)ください。