おや、幹部連中はどこに行ったんだ?
ああ、また会議か。会議が多いのは困りものだ、いつも言ってるのだが。
お、新入社員が何か資料を作っているな、どれ、何を作っている
んだ?
あれ? 俺がそばに寄っても知らぬ顔。それだけ集中しているという
ことか。それとも社長は煙たいから無視? まあ、若いうちはそれくらい
とんがってないとな。てか、こいつ、誰だ? 名前知らないぞ。
ま、いっか。
自分の席に戻るか。
・・・なんか違う。
様子が変だ。
デスクのパソコン、俺、こんなの使ってたかな?
開いてみようとするが、ノートパソコンのふたを開けられない。
俺、どうしたんだ?
酒井に聞いてみよう。酒井は・・・あ、そうか、いま幹部会議か。
会議室に行こう。
ん? 俺、いま、「行こう」と思っただけなのに、もう会議室の中にいるぞ。
おー、みんないるな。ということは俺も出席しなきゃならない会議だったんだ。
ごめん、ついうっかり忘れてしまっていたみたいだ・・・
・・・だれも俺に気づかないぞ。
・・・・
・・・・
・・・・
あ、そっか、俺・・・
そうだった!!
・・・・
・・・・
酒井は、何かを感じた。隣の山岸に、小声で言った。
「山岸、いま、社長いたような気がしたんだけど」
「? 社長はお前じゃん」
「ちがうんだよ。森崎」
「え? 何? そこ何話してんの?」
「いやね。いまさ、森崎が来てたような気がしてさ」
「実はオレも感じたんだよ。一瞬だけど」
「そうか、森崎、来てたんだ」
「俺たちでちゃんとやってるから、大丈夫だよ」
「早いね。もう、10年だからね」
「クリスマス・イブだったなあ」
「ありがとうな、森崎」