変化は小から生まれる。
これまでも人間のライフスタイルを変えてしまうほどの商品(モノやサービス)は
小から生まれてきた。
時間のない朝、それでもコーヒーを飲みたいニーズに応えるために
インスタントコーヒーを生み出したのはネスレだ。
現在、コーヒー飲料などの事業は2兆2500億円に育っている。
発端は「過剰に作りすぎてしまったコーヒー豆をなんとかしてくれないか」
というブラジル政府からのリクエストだった。
創業時のネスレは母乳の栄養を採れない乳児のために乳製品を作った。
やがてこれが粉ミルクになった。
蛇口をひねれば水が出るのに、ボトルに入れて会議中などに飲む
ライフスタイルも、ネスレが1969年、ヴィッテルブランドを
展開し始めてから生まれた。
ボトルウォーターという新しいカテゴリー。
セス・ゴーディンが大ヒット『パーミションマーケティング』の次に
自主制作し通常の2倍のプライシング(40ドル)をして販売した
『アイデアウィルスをまき散らせ』(邦訳『バイラル・マーケティング』)
で「アルタビスタはもうクールじゃない。Googleこそがいま、クールだ」
と書いたのが2000年である。
セスは同書内で全部、GoogleではなくGoogle.comと表記している。
つまり当時はまだ「Google」というブランド名が一つのカテゴリーには
なっていなくて、数あるウェブサービスの一つだったことがわかる。
現在、Google.comなんて書く人は、地球上存在しない。
当時セスに限らず多くの人にとってGoogleは検索エンジンとしての理解だったのだが、
創業者ラリー・ペイジは実はAIを目指していたことがケヴィン・ケリーの証言で
わかった。
ケヴィンは最新作『<インターネット>の次に来るもの』で、こう書いている。
2002年頃のこと、ケヴィンはGoogleの社内パーティに出席していた。
同社は新規株式公開前で当時は検索だけに特化した小さな会社だった(と
ケビンは理解していた)。
ケビンはラリーに聞いた。
「ラリー、いまだによく分からないんだ。検索サービスの会社は山ほど
あるよね。無料のウェブ検索サービスだって? どうしてそんな気になったんだい?」
ペイジの返事「僕らが本当に作っているのは、AIなんだよ(Oh, we’re really making an AI)」
*原書p.36-37 翻訳書 p.51-52、引用日本語は服部桂氏の翻訳
それからわずか10年も経たないうちに、Googleは世界を変えるAI カンパニーになっている。
街を歩いていて、主に若者世代向けの(つまり比較的安価な)賃貸物件を扱う
不動産店舗に通りがかった。
物件の売りの中に「インターネット無料」とあった。
なるほどねー。そうだよねー。きっとそうなる流れは不可避。
これができるのは小さな小回りの効く組織だけだ。
デジタルが生活や仕事に流れ込んでくるのは不可避。
子どもがケータイゲームに熱中するのも不可避。
(なのに、先日テレビでゲーム熱中をどう対策すればいいか
を長々やっていた。アドラーがベストセラーになっているのに
日本人はまったく学んでない。子どもとの課題の分離が
できてない。ゲームに夢中になろうと、結果学校に遅れようと、
学力が下がろうと、放っておけばいいのだ。)
多くの会社の組織は工場がメインの産業だった頃をなぞって、そのままだ。
デジタル化ということは、並列であり、タテではなくヨコである。
だからこそ、ぼくは「小」にビジネスチャンスが広がっていると考えている。
逆にいうなら、小こそが、明日のビジネスを担う責任を負っているのである。
小が世界を変えるのだ。