いま、ぼくたちが放り込まれ、逃げられない現実
について考察しましょう。
 昨日、散歩していたら、ボードをかかえたサーファーが自転車に乗っ
て海へ向かう後ろ姿が見えました。海のそばでは日常のなんでもない光
景です。日常光景を見送ってしばらくした後、ふと「ん!? 彼は海、
平気なのかな」と、非日常の感情が浮かんできました。

 福島原発から流れ出た汚染水がどこまでの範囲、影響を及ぼすのか。
いろんな人がいろんなことを言っていますが、どれが本当のことなのか
わかりません。そもそもぼくは、「人間にわかるはずがない」と思って
います。「想定外だった」というのが、政府も含め原発関係者の言い分
です。

しかしながら「想定できる」と思っているところが、思い上がり以外の
何ものでもありません。自然をコントロールなんて、できはしない。
その意味で、くだんのサーファーは、サーフィンを通して
自然がコントロールの外にあることをよく知っているからこそ、「考え
ても怖がってもムダ」と、「自分の身体の欲する通りに」サーフィンに
出かけたのかもしれません。なるほど。

 ここでぼくはふと、ポール・ホーケンを思い出しました。2年前に上
梓した『祝福を受けた不安 (Blessed Unrest)』(バジリコ)です。
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たった一人の人間の体内にある細胞や細胞相互の活動の総合計数だけで
も気の遠くなる数値だろう。まばたきする間に10の24乗の運動量になる。
ゼロが24個つくのだ! 実際、一秒の間に、私たちの身体は宇宙空間に
浮かぶ星の10倍もの数のプロセスを経験している。
(中略)
人体内で共時的に起こっている10の24乗もある活動を総称して「回復力
(resilience リジリエンス)」と呼ぶ。このずば抜けた回復力のおか
げで、身体の求めるまま乱暴に応じることができているのだ。
(翻訳書 p.316-317、訳は阪本)
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 ホーケンはこの本で、基本、オプティミスティック(楽観的)です。
自然の力を信じ、だからといって何もしない、というのではなく、
地球上至るところで起こっている人類史上初の運動は謙虚に続けながら、
明るい未来を築くべく力を尽くそう、と提言しているのです。

ドラッカーの数ある名言の中でもぼくが気に入っているのは
『The Effective Executive』(経営者の条件)の中にある
次の文章です(p.104)。

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Today is always the result of actions and decisions taken 
yesterday. Man, however, whatever his title or rank, cannot
foresee the future.

今日は常に昨日の行動と意思決定の結果だ。しかしながら、人間、
どんな地位にある人でも、未来を予知するなんてことはできない。
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 「想定外」のひどい現状が昨日の結果だったとしても、
できることはあります。
地球の回復力を信じて信じて、信じきって、できることを一つずつ、
実行していこうではありませんか。
今日のこの活動が、明日の結果になるのですから。
*このコラムはJOYWOWメルマガ2011年4月13日・第136号より転載しました。